或るスケベ

根が怠惰なので家では仕事できず、根暗なので仕事場では仕事できず、まさにサードプレイスたる亀有駅前のコメダ珈琲店に逃避したのが4月29日の午後7時。

ゴールデンウィーク10連休3日目の夜。こんな日のコメダ珈琲店亀有駅前店喫煙席には面白い人しかいない。

  • 孫と店に来て孫を禁煙席に座らせ、自分は喫煙席に座って、数分おきに孫の様子を見に行くおばあさん
  • パソコンを90度傾けてYoutubeを観ているおじさん(これは放映者側も悪い)
  • どう見てもその筋であることを隠さない在り方でありつつ、ホイップクリームの乗ったパンケーキに大量のシロップをかけて食べるお兄さん
  • 基本中国語で喋ってるのでお互いに中国人であろうはずなのに、時折カタコトの現代的な日本語(あいつマジでなんなの、みたいな)を織り交ぜて喋り続ける二人組のおばさん

 

中でも一番グッときたじいさんについて。

彼は僕が来店した時にはすでに喫煙席の一番奥の一人席に鎮座していた。カンタンケータイで誰かと大きい声で喋っている。齢80程度、巨大なメガネ、じいさんにしか着こなせないダボダボの茶色いジャケット、ユルッユルのスラックス、ナットレイみたいな色合いのシャツ、頭にはえんじ色のニットキャップをかなり浅めに乗せている(9割くらい尺が余って横に垂れている)。

次に気づいた時、彼は僕の近くのファミリー席にいた。店員にコーヒーチケットの仕組みをかなり詳しく訊いている。メロンソーダの購入にチケットが適用できるのかどうか、適用できるならなぜ"コーヒー"チケットなのか、を執拗に大声で訊いている。どうやら常連のようで、顔なじみっぽいバイト店員(女)も「また始まった」的な感じでほぼタメ口で応対。

次に気づいた時、彼はまた奥の席にいた。同じバイト店員に言うには(もちろん大声)、「タバコ切れちゃったからね、買ってくる。食い逃げじゃないから!ね!え゛ー、あ゛ーーヴォッ!」じいさん特有の後半のデスボイス

僕は23時の閉店ギリギリまで居たが、じいさんもかなり粘っていた。バカみたいに大きい着信音(ピロロロ)が店内のムード音楽を切り裂く。「帰るから!待っとれ、な?もう近くまでいるから!!!22時20分くらい!はい、はいよー!はい!ヴォーェッ!」語気と語尾は荒いが愛を感じるそのやりとり相手はおそらく妻。未開封の豆菓子をポケットに突っ込み、ブカブカのジャケットに着られながらヨボヨボと帰るじいさん。勝手にじいさんと妻のストーリーを思い描く僕。喫煙席に孫を座らせるババア。外は雨。